手術後の抗癌剤治療計画と副作用との向き合い方
お疲れ様です。
食卓を化学するソウタロウです。
今回は癌治療に置いて最も恐れられている
抗癌剤治療の具体的な説明と
最も気になる副作用との向き合い方について
お話いたします。
もし、乳癌になった際に一番きつい峠は
間違いなくこの手術後の抗癌剤治療です。
ドラマや映画でも頭髪が失われたり、
嘔吐を繰り返す毎日
など凄惨なシーンが流されていますが、
特にそれほど深刻ではない
初期の乳癌患者にとって
手術後の抗癌剤治療とは
実際にはどの様なものなのか、
どれほどの期間、
月に何回の頻度で通院するのか、
治療代はいくらになりそうなのか
について詳しく説明していきます。
抗癌剤治療とその意義
乳癌摘出手術を終えても、
まだ体のどこかに目に見えないほど小さな癌の小片が残っているかもしれません。
この癌小片をそのままにしておくと、
また再発し治療を受け直さなくてはいけなくなってしまう危険性があります。
それを防ぐため、全身くまなく薬を巡らし、
癌を徹底的にやっつけておくのが術後治療の目的です。
術後治療は、発症した癌の性質に合わせて以下の三つの療法を選ぶことになります。
化学療法(抗癌剤治療)
癌細胞は速く増殖する特徴を狙い、
増殖の速い細胞を優先的に攻撃する薬剤を全身にくまなく投与する療法です。
幅広いタイプの癌に効果があり、
一番確実に癌を根治できる療法ですが、
正常な細胞も傷つけてしまうため副作用が重いのも特徴です。
分子標的薬
特定の癌細胞は細胞表面に特異な突起を形成します。
その突起にくっ付く細胞だけを選択的に攻撃する薬剤を投与する療法です。
副作用が少なく、癌を確実に攻撃できる療法ですが、
特定のタイプの癌にしか効きません。
ホルモン療法
乳癌や子宮頸がんなど女性特有の癌に効く療法です。
女性ホルモンが癌の成長を促進してしまう場合、
治療期間中だけ女性ホルモンの働きを弱めることで
癌の増殖速度を弱めることを目的としています。
生理の乱れや更年期障害に似た副作用が出てきます。
出産育児に直結する副作用ですので、
治療選択の際は慎重に考えましょう。
詳しくは以下の記事でお話しております。
乳癌のタイプとそれに合わせた治療法一覧
※ベスト×ベストシリーズ名医が語る最新・最良の治療乳癌より引用
ルミナルA型
ホルモン受容体陽性で、HER2陰性と診断された場合のタイプの乳癌。
細胞としての成熟度が高いが、増殖スピードが遅い性質を持つ乳癌です。
ホルモン療法薬が一番効くタイプの乳癌なので、ホルモン療法が第一選択となり、抗癌薬を投与することは稀です。日本人乳癌患者の60%がこのタイプに当てはまります。
ルミナルB型
ホルモン受容体陽性で、Ki-67という癌の増殖度を測る値が高いタイプの乳癌。
このタイプはホルモン療法と抗癌剤治療を併用することが基本で、HER2が陽性の場合はこれに分子標的薬が追加されます。
日本人乳癌患者の5%がこのタイプに当てはまります。
HER2型
ホルモン受容体が陰性で、HER2受容体が陽性と診断されたタイプの乳癌。
ホルモン療法の効果が期待できませんが、分子標的薬がよく効きます。
日本人乳癌患者の10%がこのタイプに当てはまります。
基底細胞様型
ホルモン受容体が陰性で、HER2も陰性と診断されたトリプルネガティブタイプと呼ばれる乳癌。
ホルモン療法と分子標的薬の効果が期待はできませんが、抗癌剤がよく効くので、抗癌剤治療が第一選択となります。
日本人乳癌患者の15%がこのタイプに当てはまります。
抗癌薬治療の具体的な流れ
おおよその治療費
副作用について
抗癌剤治療で一番最初に懸念されることが
強烈と言われている副作用とどう向き合うべきなのか、
抗癌剤治療薬は細胞の中のDNAなどに作用し、
細胞の増殖を弱める働きを持ちます。
言い換えると、新陳代謝が大幅に低下します。
これによって、一番ダメージを負うのが
普段から細胞分裂が活発な
粘膜と毛母細胞です。
生じる主な副作用は以下の通りです。
吐き気・嘔吐
治療直後に症状が出る場合と、
2~7日後に出てくる人など個人差は大きいです。
抗癌剤を投薬する前に、
吐き気止め薬が点滴され、
点滴後も飲み薬を
症状の重さに合わせて内服します。
口内炎
口内の粘膜の代謝が落ちることにより、
脆くなっていることから、
ふとした衝撃で
口内炎になってしまいます。
普段から、熱いものや刺激物を取らない
柔らかい歯ブラシを使うなど気をつけましょう。
骨髄機能低下
骨髄細胞の代謝が低下することにより、
白血球をはじめとする免疫機能が低下します。
治療期間中に感染症を患った場合、
入院観察をする必要が出てきます。
治療期間中は衛生面に普段以上に気をつけましょう。
脱毛
毛母細胞の代謝が落ちることにより、
毛を維持する力が落ちます。
投薬後2~3週間くらいから、
髪、眉毛、まつ毛、鼻毛が抜けていきます。
予防方法は未だ確立されておらず、
治療が終わって、新しく毛が生えてくるまでは
帽子、ウィッグ、スカーフで対応するしかありません。
爪の変化
爪にいくタンパク質量も低下するため、
手足の爪が黒ずんだり、
二枚爪になることがあります。
治療期間中はネイルケアは重点的に行いましょう。
爪に変化が出た場合、
治療後半年で手の爪が、
一年で足の爪が生え変わります。
コスメテッィクインフォメーションでは、
癌患者さん向けのウィッグやネイルケアについての情報や指導を
行っています。
気をつけるべきこと
こんな時は必ず担当医へ!
・強い吐き気、嘔吐があり水分もとれないとき
・発熱があり、処方された抗菌薬を3日間内服しても熱が下がらないとき
・激しい下痢や息苦しさがあるとき
・薬の内服についてわからないことがあるとき
免疫対策
術後治療は最長二年間続きます、
その間、免疫力が大きく低下します。
体力を使う治療中に体調を崩さないことが、
患者本人と家族全員のミッションです。
術後治療中は以下のことを家族で守るよう頑張りましょう。
・家に帰ったら手洗いうがいを徹底する
・家は頻繁に換気し、清潔に保つ
・冬場は部屋が乾燥しないように加湿する
インフルエンザが流行ってもワクチン接種を受けることができません。ウイルスが空気感染しないよう冬場は部屋の湿度には常時気をつけましょう。
・生物は野菜も含め極力避ける
ビタミンを取るためには生野菜が大切ですが、生野菜に含まれる細菌からお腹を下しやすくなっているため、極力火の通ったものしか口にしないよう気をつけましょう。
コスメティックインフォメーション
残念ながら術後治療中の
脱毛と爪の劣化はどうしても避けられません。
もちろん、治療中も人と会い、お仕事もしなくてはなりません。
見た目は生活の質に直結する以上、
治療中のコスメケアは非常に大切な課題となります。
そこで、国立がん研究センター中央病院では
治療中の患者さん専用のコスメ情報を提供する
コスメティックインフォメーション講座を定期的に開催しています。
主に、以下の情報を日々更新して提供しています。
・個人差に合わせたウィッグの紹介
・全体的な毛髪の色付けケアの紹介
・外出用のダーク色系の手袋の紹介
・乳房再建までのブラの紹介
●引用文献
・ベスト×ベストシリーズ名医が語る最新・最良の治療乳癌より引用